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『前世への冒険』 森下典子 [小説]


まず。

題名で判断してしまってはもったいないです。
騙されたと思って、1ページだけでも読んでみて下さい。
先入観を捨てて・・・

前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って

前世への冒険 ルネサンスの天才彫刻家を追って

  • 作者: 森下 典子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/05
  • メディア: 文庫

などと紋切り型のお誘いをかけたところで、結局、読む人は読むし、読まない人は読まない。
それはわかっています。(勧誘ってむつかしいね)

ぜひ、この一冊の文庫を読んでみて下さい。
これはいわゆる精神世界ものではないですし、オカルトでもない。(いや、どちらも馬鹿にしてませんよっ)
ドキュメンタリー、事実です。本当にあったこと。(という自明のことをすでに前提にせざるをえないのも事実)

じゃあ、こんな感じでどうでしょう。

もしもあなたが、ある時、前世が見えるという人に「あなたの前世は鑑真和正の弟子のひとりです」と言われたとしたら、どう反応するでしょうか。
私なら、ふうんそうなんだ、といって一見信じた振りをしてその実まったく信じていない、けれども何かの話のネタには使えるから覚えておこう、なんてそんな風に受け流してしまいそうです。
著者の森下さんも、そういうスタンスでした。そもそも雑誌の企画で「著者の前世をネタに記事を書いて欲しい」という話に乗ったのですから、もう確信犯的です。この時点でまったく信じていません。興味本位です。
そして、鑑真の弟子だけでは記事が埋まらないから(!)という理由で、いくつかある前世のうち、別のも教えてもらおうと思いつきます。しかも相手がネタを仕込む時間を与えまいとして、夜中に電話して次の早朝に会いに行くという周到さです。
これはかなりいじわるですね。いや、それだけ真剣ということか。戯言を信じて馬鹿にされたくない。わかります。
そして口から出たのは、あなたの前世はイタリアのルネサンス時代の彫刻家で、しかも夭折した美少年で時代の寵児だった、ということ。生まれた場所はどこそこで、こう育って、職を得て、作品を残し、そして死んだと。
その人物、デジデリオという彫刻家はルネサンスの美術を詳細に調べると、日本の本にも名前ぐらいは結構出てくる人物だそうです。
しかし、本に書かれている出生地とはくい違っているし、「作品を見たければここに行け」といわれた作品は他人の作品として後世に残っている。重要なのは、プロのライターである著者が何週間もかけて調べてわかったことを、その人は一瞬にしてメモに書き留めたこと。
調べるうちに本の内容は所詮、あいまいなことはあいまいなままにしか書けないということがわかってくる。
しかし、その人の言っていることは具体的で真実味を帯びてくる・・・

このままいくと全部書いてしまうので、ここまでにしますが(笑)。
面白いのは、前世がわかることではなくて、語られた前世が500年後の現実をゆるがしていくことです。

人が一般にうさんくさいと思われる領域に踏み込んで、その領域を常識の方に近付けようとして引っぱってくる、あるいは常識の方を引っぱろうとする。ここに立ちはだかるのは冒頭に書いたような紋切り型とそれに対する抵抗感、無力感です。

私はよく妻に「この本、絶対面白いから読んだ方がいいよ!」と力説されるのですが、そうはいっても自分に興味がわかないものはなかなか手が出ません(いや、妻の推薦はあまりはずれないので信用していますが)。読んだ人にはわかっているのです。それがどれほど面白い物なのかを。そして、読んでいない人にはわからないのです、読まないかぎりは永遠に。
さて、ではたまには私の方から「この本絶対面白いから読んだ方がいいよ!」といいましょうか。

はい、この本は本当に面白いです。
嘘だと思ったらアマゾンの評でも見て下さい。(結局、他人頼みかい)


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