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よしながふみ あのひととここだけのおしゃべり [本]


よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2007/10/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



つねづね感じているのですが、対談というのは対面する二人が手探りで話を転がしていって、面白くなってきた頃に終わってしまうものが多いのです。私はその終わった後の話がもっと聞きたいのです。ひどいものになると、ようやく問題が浮き彫りになった瞬間に終了するものもあります。お前らお互いに挨拶を交わして終わりかーっ!

さて、漫画家のよしながふみさんが同業者をメインに対談したのをまとめたものがこの「あのひととここだけのおしゃべり」です。この対談は濃い。読みごたえがありました。いやあ、こういう対談が読みたかったのです。あうんの呼吸で、丁々発止のやりとり。膨大な注がついていますが、ほとんどが会話に出てくる漫画家の説明なので、漫画好きならスラスラ読めるはず。

私は、よしながふみさんの漫画をくまなく読んでいるというわけではありませんが、大好きな漫画家さんです。乗りに乗っているという意味では今一番の作家さんではないでしょうか(いやまだまだ今以上に期待し続けますよ!)。
完結した『フラワー・オブ・ライフ』は素晴らしかったです。連載中の『きのう何食べた?』も『大奥』からも目が離せません。『愛がなくても喰ってゆけます。』も好き。もちろん名作『西洋骨董洋菓子店』もはずせません。(アニメ化にも期待)

冒頭のやまだないと氏、福田里香氏との鼎談では近年まれに見るくらいの少女漫画への熱い想いが語られています。私は居酒屋で隣の席でこんな話が繰り広げられていて、それを盗み聞きしているような気分になりました。そうそう、そうなんだよね!と心の中でうなずいてるの。あまりにも私が辿っていった少女漫画の遍歴そのままだったので、感動すら覚えました。最終的には24年組に行き着くんだよね!やっぱり。
三原順の話題だけは私も声を揃えて会話に加わりたくなりました。みんな同じことを思うんだね!『はみだしっ子』もいいけど『ロングアゴー』と『ムーンライティング』と『SONS』を描いてくれてありがとう!三原先生。という。
『はみだしっ子』子供の視点で描かれた最初の数話はやっぱり少ししんどかった部分もありました。中盤から後半にかけては「どうしてボクを見てくれないの?愛してくれないの?」という思いから解き放たれたと思います。
そして、さらなる高みに到達し円熟さをもって描かれた『SONS』を私はこよなく愛するものです。

くらもちふさこが職人だという話も同感。芸術家肌に行かない、というのはまったくその通りだと思います。なんでそんなことがわかるんだろう、この人たちは。くらもちふさこがすごいのは、(語弊を恐れずいえば)突出したすごい漫画を描くからではなく、にもかかわらず現役先頭を平然と走る普通さの為だからなのですよね!

大島弓子を男が誤って読み解いているのでは、という話も目からウロコでした。私は大島弓子もこよなく愛する人間ですが、面白いと思う気持ちは間違った所から来ているのでしょうか。少しひっかかったのは、ここで避難されている男性像がけっこうステレオタイプな気がしたのです。他の対談で出てくる男性は離婚漫画を描けない話とか。それは事実だったのでしょうけど、描ける男もいると思うんですよね。特に若手で。今度は男性漫画家とも対談して下さい(希望)。

私はBLには詳しくない人間ですが、BLをとりまく状況やBLの自由さの話には興味を持ちました。何作か読んでみようかな、という気持ちになりました。装丁や本棚の敷居は高いんですけどね、実際。でも乗り越えてみましょうか。

漫画に対する創作姿勢には打たれるものがあります。そして実際に漫画が面白いのです。さらっと描いてある風なのに、よく読むとそのバックボーンには一筋縄ではいかないものに貫かれているのです。
最近とみに思うことですが、あらゆる創作は過去と未来に繋がっているものであり、その時々で達成されるものもあれば、長いスパンで実現されるものもあります。伝統を乗り越えることで現れる現実もあれば、伝統を踏まえることで現実をのりこえることだってあるのです。
よしなが氏のいう、贅沢なものを読ませていただいた恩返しの代わりに、これから先の人たちに伝えていきたいという気持ちは、心の底から出たものだと思います。創作を志す者は肝に命じるべきではないでしょうか。
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