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シングルモルトのロールスロイスとは [酒]

ウィスキーの語源はゲール語で「生命の水」を意味するウシュク・ベーハー。
ウィスキーの起源はアイルランドかスコットランドかでいまだに論争中である(文献上はアイルランドのが最古らしい)。
ウィスキーは蒸留酒である。発芽した大麦を煮て甘い麦汁をつくり、それが発酵してから蒸溜する。
蒸溜技術は錬金術から発達したといわれるが、もともとはそれ以前3〜4世紀ころからあった技術だという。
蒸留したアルコールを冷却して、蒸留酒ができる。ジンやラム、ウォトカ、ブランデーも原材料が違うだけで、基本は同じらしい。
ウィスキーも最初は農家で自家製造をしており、自分達で楽しむ分だけ作っていたのだろう。
そしてそれを大量に密造して商売をする者も現れただろう。税吏との闘争の開始である。
スコットランドのハイランドは英国からみれば僻地もいいところで、税吏がなかなか追いかけられない場所であった。したがって密造者たちはどんどん奥地へ入っていく。しかも、そこは気候も水も酒造りにはうってつけの地だったのだ。
追手が来ては逃げていく。妻が税吏たちの接待をしているうちに裏口から逃げ出す男たち(イメージです)。
作った酒は持って逃げられないから隠して置いておく。
さらにウィスキーとばれないように、合法的だった輸入シェリー酒(スペインはアンダルシア地方特産のワインです)の樽の中につめてごまかしていた。あれやこれやで放置された樽の中のウィスキー。
オークの木から作られた樽の中で、長期間の熟成がされたその液体には、樽からしみ出た成分が溶け込み、より豊潤な香り、味わい、そしてあの琥珀色をウィスキーに加えていたのだった。
これが今でいう所のウィスキーの誕生といえるかもしれない。偶然だったのか意図的だったのか。
後世には美味しい酒だけが残った。

さて、仮に「本来のウィスキー」というものがあるとしたら、どの時点での話になるだろうか。
上記の簡略な歴史からいけば究極的には、蒸溜しただけの状態まで戻ってしまうのが「本来」なのかもしれない。
あるいは樽熟成をしたことで完成したと考えれば、その酒が「本来」なのかもしれない。
しかし、酒造りをしている職人に訊けば「本来」というものはナンセンスなのだろう。
スコットランドの職人はおそらく「本来も何も俺んとこのウィスキーが最高だ」というに違いない。
あるいは日本の職人は「これから理想のウィスキーを作るために日々研究をしている」と答える気がする。
過去に「そうあるべき姿」を求めるのか、未来に求めるのか。
これまでのやり方を一つも変えずに「これまでもこうやってきたし、これからもこうする」というのもうなずける。
より良いやり方を模索しながら「きっともっと素晴らしいものがつくれるはずだ」というのもうなずける。
他人がいう「本来の」という言葉には魔力がある。
けれども、僕らはしばしば「本来の」を求めてしまうのだ。無数の本来。それって本当なのか?

と、いうことを念頭において以下の文を綴るのでしばしお付き合いを。

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