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鉄ヲタ・ニューウェーブ『鉄子の旅』 [漫画]

 『鉄子の旅』1〜4巻を読んだ。
 鉄道オタク、マニアと呼ばれる人々は世の中に意外と多く存在している。
 かくいう私の友人にも(本人は絶対に認めないだろうが)鉄ちゃんがいる。
 付け加えておくと、私は時刻表を調べるのも億劫な、ただの凡人だ。

鉄子の旅 1 (1)

鉄子の旅 1 (1)

  • 作者: 菊池 直恵
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/11/30
  • メディア: コミック

 自動車好きの人にはなぜだか格好いい印象がある。しかし、鉄道オタク(鉄道好きとはあまり呼ばれない)にはそんなスマートな印象は与えられない。何故だろうか。
 自動車の内部構造や部品の名前に詳しくて、良い中古屋とも懇意で、日々改造に熱心な人間がいたとしよう。自分の車を写真に納めて誰かに自慢げに披露するかもしれない。『モーターマガジン』を毎号買っているかもしれない。
 そんな人間が、たとえ普段はちょっとオタクっぽい雰囲気を醸し出していたとしても、話題の中で自動車のことに異様に詳しい人だと分かった瞬間に、彼は「ちょっと頼れそうな男」に見えるような気がする(個人的見解です)。
 しかし、だ。普段は快活で人付き合いもよく、明るくさわやかな人間がいたとしよう。ある日、彼が電車のダイヤに精通し車両の部品の名前に詳しくて、乗り継ぎの研究に熱心だということが分かってしまう。電車の写真を誰かに披露する、なんてこともしてしまうかもしれない。『鉄道ジャーナル』を毎号買っているかもしれない。時刻表も毎月買っているかもしれない。
 その瞬間、彼は「実はかなりオタクな男」だと思われてしまうに違いない(たぶん皆そう思う)。
 何故だろうか?何故、同じじゃないのだろうか。

 電車が好きだなんて子供みたいだから?いやいや子供は自動車だって好きだ。子供時代を引きずっているなどという浅はかな考えでは理解されない。

 『鉄子の旅』に出てくる横見さんは、きっとそんな理不尽さを身をもって理解しているに違いない。だから必死なのだ。鉄道オタクを『鉄ヲタ』と改称し、格好よくさわやかなキムタクと同列に扱われるようになるよう、日々研鑽しつつ列車に乗っているのだ。

 漫画家のキクチさんは鉄道オタクを迷惑がる人々の代表として自分を描いている。巻を追うごとにその非難の舌鋒はゆるゆる鈍くなっていくが、それは知らないうちに自分が鉄道の旅を楽しんでいるという気持ちに嘘をつけなくなったのだと読み取れる。自分が鉄道オタクの領域にはまりこんでいることを半分自覚しつつ、抵抗しているのだ。
 だから、4巻までくると鉄ヲタへの突っ込みではなく、横見さんというキャラクターへの突っ込みへすり変わってしまう。この得難いキャラクターを突っ込むことで生まれる笑いが、この巻ですっかり板についたのである。嫌みも無く、ただただ面白く、笑える。

 それにしても・・・毎日、通勤で利用している駅も通過するだけの駅も、全部横見さんが降りたことがあるのだと考えると、ちょっと・・・すごいね。
 ホームに横見さんの幻が見える・・・


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