『からん』木村紺 [漫画]
『神戸在住』完結後に『巨娘』を発表し、それから満を持して連載が開始されたこの『からん』。第1巻をじっくりと味わいました。すばらしかったです。痛快無比なあの『巨娘』もまだ続きそうですし、ファンとしては楽しみが増えてきました。
さてこの『からん』、京都の女学園を舞台にした柔道漫画・・・と紹介したいところですがそれにおさまらない正統派学園物になりそうな予感です。もはや緩急自在になったシリアスとギャグのバランスとリズムがはまってしまうとクセになります。『神戸在住』では「カマトトぶってー」といいたくなる瞬間も多少ありましたが、単行本のカバー裏のわけのわからないテンションの高さから、実は猫をかぶっているだけだというのはおそらく多くのファンの思っていたところでしょう。それが『巨娘』で180度正反対へぶっちぎってしまい、木村紺という漫画家の潜在的ポテンシャルに恐れをなしたものでした。
そして『からん』はそのちょうど中間にあるような描きっぷりです。いやとうとう本領発揮といったところでしょうか。それまでのモノローグ的ナレーションが物語の進展に補助的な役割をしていた、独自の形式を封印しています。絵柄も意識的に変えています。それだけに作者の本作にかける意気がびしびし伝わってくるようです。新しいことへの挑戦。それはこの場合とりもなおさず「普通の」漫画として描くことに他ならないのですが。そしてその試みは今、成功をおさめていると感じます。形式に変化はあってもこの漫画には木村紺の烙印がくっきりと押されているのを読みながら感じます。そしてその変化によって描かれ得るようになった登場人物の内面についても「普通の」描写でなく、他の漫画が踏み込めていない深さへ一歩踏み込んだものを目指しているようにも感じます。
結果、濃密な構成と丁々発止のコマ展開によるたいそう読みごたえのある漫画になっております。
というわけで私はこの漫画を断然応援します。とても面白いよ。
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